第六回/2005年 21世紀くすり俳句大賞第六回/2005年 21世紀くすり俳句大賞

【選評】

薬品を「くすり」と言い、医者を「くすし」と呼ぶ。国学者伴信友は、かつて太古に「くすす」「くする」という動詞があったはずと説くが、奇蹟の奇を当てる形容詞「くし」との関連を見ることもできるのではないか。
くすりを媒介にいのちの奇蹟を見つめる、ケロリンの内外薬品「21世紀くすり俳句大賞」も第六回を迎え、今回もまた質量兼ねて卓れた句が多数寄せられた。やむなく落した作も含め甲乙つけがたく、審査担当者としてうれしい限りだ。
大賞の安田茂さん。空を渡る雁の声の谺が海の底から聞こえる。それを幻聴としてしまってはつまらない。万物のいのちは宇宙に満ちて照応する。その万物照応のいのちの声を、作者は心耳を以て捉えたのだ。
優秀賞の三句も素晴らしい。原峻一郎さん。べらぼうに焚火を燃やす行為に二十歳の若さと欝屈が収斂している。曽根新五郎さん。墓守とは伴侶を亡くした者のことだろうか。淋しくなれば墓洗うという表現に、いのちをいとしむ思いがせつせつとあふれている。中島八州央さん。萩原朔太郎の「月に吠える」は一匹だが、この句では月の豊穣の力のゆえか一匹が一匹を呼び、しだいに増えていくのだ。ケロリン社長賞の神崎正道さんの一句も、遠い夏の日の記憶を甦らせて鮮烈だ。
佳作の大田黒一枝さん、石坂寿鳳さん、準佳作の益子聰さん、白井典子さん、入選の下谷海二さん、百木京子さん……その他、ふれたい句は多く、限りがない。つづく第七回にも自信作を多数送っていただきたいとの希望を述べて、感動への感謝に代えたい。

◎なお審査員の責任において部分的に添削した作があることを申し添えます。

大賞へ→

【審査員】

写真:高橋睦朗氏

高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi

経歴

ページTOPに戻る